レポート

リクシャードライバー編その5上(マイソール)

公開日 : 2007年08月14日
最終更新 :

マイソールへ着いた翌日、私はバナナを食べると、ホテルを出た。
若い男が話しかけてくる。
「どこへ行くの?」
「チャーイが飲みたい」
私は答えた。
「チャーイなら、こっちだ」
若い男は、先に立って歩き出した。
雑貨店のような店の店先へ来た。
若い男が、店員に何か言っている。
「チャーイ、いくら?」
私が聞いた。
「4ルピー」
店員が答える。
4ルピー?
「バンガロールでは、2ルピー50パイサだったぞ」
私が必死に抗議する。
「4ルピー」
店員が、目を伏せて繰り返す。
しかたない。
4ルピー払って、小さいコップのチャーイを飲む。
若い男もチャーイを飲んでいる。が、金を払う様子がない。
私に自分の分も払わせたな。
若い男をよく見る。
目がイっている。
あぶない感じのあんちゃんだ。
後で聞きだしたところによると、28才、独身、中国人の彼女あり、だそうだ。
「いいホテル、知らない?」
私は聞いた。
「知ってるとも。来いよ」
あんちゃんは、近くにとめてあったリクシャーに乗った。
「あんた、リクシャードライバーだったの?」
しかたなく、リクシャーに乗る。
いつのまにか、一人の少年が、あんちゃんと並んで、運転席に座っている。
あんちゃんのいとこだそうだ。
第一のホテル。
「シングルを」
と言う私の横から、あんちゃんが口を出す。
「俺と二人、ツインで」
部屋は、いまいち。
リクシャーに戻ると、背中からワッと大音響の音楽。
「こらっ。止めろ」
私が怒鳴ると、あんちゃんは大笑いして、音楽を止める。
第二のホテル。
あんちゃんは「ここが最後だ」と言う。
うーん。高すぎ。
リクシャーに戻ると、また、大音響が。
「こらっ。止めろ」
あんちゃんは大笑いしている。
こいつ...。
第三のホテル...。第四のホテル...。
疲れてきた。
ホテルのそばに、ジューススタンドを見つけたので「ジュースを飲もうよ」と誘った。
マンゴージュースを注文すると、店員は、15ルピーだと言う。
物価の高いバンガロールでも、マンゴージュース一杯15ルピーしない。
あんちゃんがまた、店員に何か言ったな。
ボッテやれとかなんとか。
「飲まないの?」
あんちゃんがジュースを飲まないので、私が聞いた。
おごってもいいつもりだったのに。
あんちゃんは飲まないと言う。
あんちゃんのいとこの少年が言った。
「チャーイが飲みたいよ。2ルピーだよ」
「私はさっき、4ルピー払ったぞ」
私はあんちゃんに詰め寄った。
あんちゃんは「俺のほうが強い」とばかりに、腕を曲げて力こぶをつくってみせる。
私も並んで、力こぶをつくった。
「いくら、手数料をもらうの?」
私は尋ねた。
「手数料なんて、もらわないよ。あんたから、ガッポリ金もらうもんね」
「大きなダイアモンドあげるからね」
私も調子をあわせる。
マンゴージュースを飲み終わった。
あんちゃんが
「チャーイが飲みたい」
と言い出す。
「もう遅い。次のホテル行こ」
(続く)

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