レポート

リクシャードライバー編 その6(デリー)

公開日 : 2008年01月04日
最終更新 :

アンサルプラザでシューズを買った。
日本から履いてきたシューズが、とうとう、破れたのだ。
インドでは、サンダルを履く外国人旅行者が多いが、私はやっぱり、歩きやすいシューズが好きだ。

買ったその場で、新しいシューズに履き替えた。
今まで履いていたシューズは、店で処分してもらおうと思ったのだが、意思がうまく通じず、買ったシューズが入っていた箱に入れられて、持ち帰らされてしまった。

アンサルプラザのオートリクシャー乗り場へ行く。
コンノートプレイスへ、50ルピーで行くことに、折り合いがついた。
と、そのリクシャードライバーは、私を、別のリクシャーへ連れて行った。
私はリクシャーに乗ると、ガイドブックをひろげた。
「どこへ行くんだ?」
とリクシャードライバーが聞く。
「コンノートプレイス」
「コンノートプレイスのどこだ?」
私はデリーに詳しくない。
うーん。
「ジャンパト。50ルピー」
「100ルピーだ」
リクシャーは走り出した。
私は、揺れながら、ガイドブックを見た。
やっぱり、日本食が食べたい。
「グランドハイアットホテルへ行って」
と叫ぶ。
リクシャーは、渋滞に巻き込まれて、動かなくなった。
「グランドハイアット。200ルピーだ」
「100ルピー」
私も叫ぶ。
「これ、あげるからさ」
私は、シューズの箱を叩いてみせた。
リクシャードライバーは「くれるのか?」と言う。
「あげるよ!」
ドライバーは、何事か考え始めた。
じっと、前を向いている。
しめしめ。
リクシャーが走り始めた。
また、渋滞で止まる。
ドライバーが、突然、後ろを向き、私の足元をのぞきこんだ。
「それ、いくらしたんだ?」
「3000ルピー」
「そんなの、1500ルピーだよ。アンサルプラザは高いんだ」
なに?
私はだまされたのか?
私の旗色が悪くなった。
「本当に、1500ルピーだと思うか?」
渋滞で止まったとき、ドライバーに聞いた。
「3000ルピーだよ」
ドライバーは笑っている。
くそう。
リクシャーは、渋滞で止まっては走り、走っては止まった。
「150ルピー」
リクシャードライバーが言う。
「100ルピー。これをあげるからさ」
ドライバーは、左足を持ち上げて見せた。
革靴を履いている。
「私には、このとおり、靴がある。あんたの靴は、私には小さいね」
「娘がいるでしょ」
「娘はまだ、9歳だ」
「インド人に売るといいよ」
これだけ裸足の人がいるんだから、私の古くなった靴を履いてくれる人もいるだろう。
「いらないよ」
それからも、ドライバーと私は「150ルピー」「100ルピー」と言い合いを続けた。

グランドハイアットに着いた。
ドライバーは、後ろを振り向くと、目を輝かせて
「中を見せろ!」
と言った。
私は箱のふたを開けた。
「そんなもの、いらないよ」
「洗ったら、きれいになるよ」
「そのへんに、捨てろよ」
インド人に「そんなもの、捨てろ」と言われてしまった。
「140ルピー。私はこれから、客もなしで、帰らないといけないんだからな」

さすが、インド人。
世の中にうまい話はない、ということを知っている。
だましあう文化の中で、育んだ生活の知恵だろう。

古いシューズを入れた箱は、日本食レストランに置いてくることに成功した。
爆弾と間違える人もいないだろう。

リクシャードライバーとのだましあい、もとい、闘いは続く・・・。

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