欧州加圧水型炉(EPR:European Pressurized Water Reactor) 亀レスですみません。 欧州加圧水型炉(EPR)は、仏のAREVA社(Framatome社がSiemens社の 原子力部門を買収)が開発した第3世代の革新型加圧水型炉(Evolutionary -PWR)で、基本構成および主要機器は在来PWRと同様ですが、経済性と 安全性に一層の向上が図られているという宣伝がされております。 原子炉格納容器は、ヨーロッパで発生する可能性のある航空機の衝突や 炉心溶融に対応できる堅牢な設計がなされているとの事。 仏や中国で建設中で、2012年から2014年に営業運転開始予定です。 今回AREVA社が来日した主な理由は下記の2つと考えております 1).仏の国策会社が進めている営業運転直前の原子炉への風当たりを 和らげる 2).非常時対応策の効果確認や実地訓練と実験等貴重なデータを得る 絶好のチャンス 安全性への設計概念; ・一次・二次側安全系と、非常用電源や冷却水の注入・供給等の 付帯制御系統を完全に分離 ・非常用電源や発電機等を用いるのと併用して、重力や気・液の 自然対流、蓄積熱エネルギー、液体の密度差等の単純な (受動的)エネルギー源を用いる中小型を対象とした受動的安全炉 ・事故時にはこの受動的ECCSが動作して最大7日程度までの 作業停止余裕時間を取れるように大容量の冷却水を貯蔵している (勿論、個々の原子炉設計の余裕度に依存する) 上記の安全設備が全て確実に動作した場合の信頼性; 1).プラント内要因による炉心溶融確率を10-6/炉年以下 全世界で1000台設置すると、1000年に1台炉心溶融が発生する 2).原子炉格納容器外放射性物質漏出確率を10-7/炉年以下 全世界で1000台設置すると、10000年に1台放射性物質が漏洩する しかしバルブや継ぎ手類等の部品は各方向への異常な応力に対して大きな 信頼度は無いので、システム全体としてFail-safe構造がどれ程熟慮されて いるかが問題。 EPRでも今回のような烈震で、建屋のコンクリートや格納容器への亀裂、 配管のずれや継ぎ手やバルブ類への過剰応力による亀裂やリークに 対応できる確証は担保されていない。 旅行中にこのような事故に遭遇した時は現地の新聞を入念に読む事を お勧めします。(ある程度の科学的な知識のある事が大前提ですが...) ・どのような事が何処でどの程度の規模で発生しているか ・風向きと風速、天候の推移 ・自分が移動する航空機や鉄道の経路...等 1999年に発生したJCOの事故直後に、偶然帰国のためLA空港に向かう タクシーの運転手さんが心配しロサンゼルス・タイムスを手渡して くれました。 このような地方の大衆紙でも、事故や核反応の詳細な説明とグラフや 図が掲載されていて日本での状況が明確に理解でき、 安全に帰国できることも判明して安堵しました。 帰国して日本の大手新聞をみると、素人の感情的な記事だらけで 科学的にきちんと説明できている物はひとつも無いことに 海外との記者のレベル差に愕然としました。 今回の福島原発はJCOやスリーマイル島をはるかに上回っており、 石棺で広い地域の封鎖が困難と言う点ではチェルノブイリも 上回る深刻度です。 またTVでの発表でも安全性を強調するだけで、公表されたデータの 深刻さと発表内容のギャップが益々大きくなって不信感を強めている 事も大変腹が立ちます。 先に放射能と放射線、放射性物質、非常時の許容線量の区別もつかない 方のブログを内容も解らずに投稿する方もおられましたが... (管理者の削除を感謝します) ですから米国や露など関連各国が独自に大勢来日して放射線測定を 進めているのです。
>素人の感情的な記事だらけ まさにそこです! >科学的にきちんと説明できている物はひとつ >も無いことに海外との記者のレベル差に愕然と >しました。 冷却水が流れなくなれば炉心溶融まで一直線です。 そんなことは、素人の私ですら11日の17時に直感しま した。なのになぜマスコミはのほほんとしているのだろうか。 船底に孔が開いた船に乗って、「沈みません。大丈夫 です」と言い張っているのとおなじです。「船長さん、 ウソはやめてください!」 と言えないのです。 もう、原発の動作原理を分かっている記者はいない のか。情けないです。フランス2のニュースがどれ だけ事象を客観的かつ的確に捉えていたか。 おまけに、第1週のNHKは、海外での報道の紹介 をシャットダウン。 最初の1週間は、飛び出してくる核種についての 言及がまったくなく、「放射線の強さ」や「通常の 人間が1年で浴びる・・・」 ばかり。 ヨウ素131 という言葉が出たのは2週目です。 昨日は、検出された放射能の、規制値に対する倍率を 有効数字4桁で発表する。高校の試験でXでしょう。 一方、原発にいる当事者も、どうなっているのか、どうすれば いいのか分からない。(これは無理からぬ所です) 団塊の世代がリタイアしたら、途端に人材難になったのでは? かつては、大熊由紀子などという、一応、分かっているジャー ナリストもいたのに。
ペーパードライバーとインターネットコミュニティの恐ろしさ GGA02757 さん 1990年頃から日本の製造業の体質が変化して来てます。 特に、機器の安全対策や初歩的な基本配置等についても、 我々ユーザ側からメーカーの若手技術者に具体的な改善対策の指示を 与えないと、機器や設備が危なくて使用できない状態になってました。 高名なブランド大学(失礼)の卒業生でも、企業では使い物になりません。 実戦経験が必要で、これが日本の社会を支えて来ました。 欧米の大学に設置されている程の安全マニュアルは、日本の大学では 皆無ですし、実戦経験のないかたがたが頭の中で教育されてます。 基本事項も知らない初歩的なミスで沢山の事故がありました。 ペーパードライバーの集団と言ったほうが正しい状態でした。 理科系の大学卒業と言うだけでは、社会に責任を負った対応はできません。 (ハトヤ○さん、カ○さんなどを見ればお分かりかと...) しかも今回TVに登場されている方々は殆ど文科系、東電や原子力安全委員に 至っては全く状況を把握しておらず、部下に丸投げ、部下は下請けに丸投げ状態。 副社長以下全員を、現場に常駐させてやりたいです。 (瓦礫の運搬位には使えるでしょう) 大学の先生方も、全員ではありませんがペーパードライバーが多いです。 「専門家」って、そんな状態の方々が多いことも事実です。 この掲示板で、「脳内旅行」という言葉にお目にかかりましたが これらの害毒は可愛いものですね。 現場を見ない「インターネットコミュニティ」の恐ろしさを痛感します。
Re: 欧州加圧水型炉(EPR:European Pressurized Water Reactor) May4さん、詳しい説明を有難うございます。 安全性の優位性について書かれていて参考になりました。 この原子炉一機の発電容量は大きいのでしょうか? 日本の原発は年月を掛けて数機の原子炉を追加作成していますが、これは日本が特殊事情なのでしょうか。 外国で見た原発は大規模でしたが、精々2機ほどの原子炉みたいだったので疑問に思っています。 なお、私は原発を否定するものではありません。
欧州加圧水型炉(EPR:European Pressurized Water Reactor)の規模 フレンチ☆☆ さん >この原子炉一機の発電容量は大きいのでしょうか? 中小型の原子炉用だそうです。 詳細のデータは勿論公開されておりませんで、理由は メーカーの一部の技術者しか知らないと思います。 ただし簡単に理解できることは、受動的安全炉ですので 事故時に受動的ECCSを動作させるために、大容量の 冷却水を貯蔵する必要があります。 この重量だけでも支えるタンクや建屋は相当量の強度を 必要としますので、それらの自重をも支えられる構造が 不可欠です。(地盤も相当堅固な地盤が必要です) ですから大きな物は建築できません。 >日本の原発は年月を掛けて数機の原子炉を追加作成して >いますが、これは日本が特殊事情なのでしょうか。 はい、福島原子力発電所は異常だと思います。 一箇所に建設しすぎではないでしょうか? (だから海外の方々も大きな関心を示しているのです) >外国で見た原発は大規模でしたが、精々2機ほどの >原子炉みたいだったので疑問に思っています。 炉そのものは小さくても、防護用の建屋等の付帯設備が 大きいのではないでしょうか? 福島原発は建屋や安全用の付帯設備が小さすぎます。 >なお、私は原発を否定するものではありません。 はい、良く理解しております。 たとえ否定されるご意見をお持ちの方でも、「できないことや 架空の事を述べ無い限り」原理原則に反しない議論は もっと進めるべきと思います。 色々な観点から色々な議論をして初めて客観的で妥当な 結論を出すという事が「科学的な考え方」です。 たとえば爆発した建屋の空間容積と水素ガスの爆発濃度限界から 発生した水素ガスの量が算出でき、これから反応したジルコニウム の量も算出できます。すると燃料棒の被覆の破損量も高校の 化学程度で概算できます。 その他かなりの事柄がわかってしまうのです。 原子力関連の会社や団体のHPを覗いてみると、どこかの 宗教団体のような表現が目に付きます。 将来の日本を滅亡させないためにも、良く考えてリスク管理を 進めて欲しいですね。
Re: 欧州加圧水型炉(EPR:European Pressurized Water Reactor) May4さん 解説有難うございます。 原子力発電で発電された電力を使っておきながら、原発建設地から遠い事もあり、表面的にしか理解していませんでしたので、今後機会を見て勉強してみたいと思います。
Re: Re: 欧州加圧水型炉(EPR:European Pressurized Water Reactor) 内蔵介さん 欧州加圧水型炉(EPR)でも、公称寿命は60年です。 福島原発は古いタイプで既に40年以上も経過しています。 しかも安全率や冗長性も加味されておらず、余裕も無ければ Fail-safeシステムにもなっていない事が残念ながら実証されてしまいました。 初期の事変で必然的に廃炉になる事は頭の中で解っているのに、 (覚悟を決めて)最初の2日間でやるべき事を先延ばししてしまった事が 現在の事態を招いているのです。 原子力発電所を建設するなと言っているのではなく、十分なリスク回避が できるように、施設やシステムの余裕度と安全性に関して時代と共に 改善して行くべきなのです。(プロであるべき関係者が下請け丸投げで、 放射線管理も不十分な作業をさせる等言語道断です) また、放射線線量測定者が各国から入国してデータを収集しているようですが、 これは日本への核爆弾攻撃を行った際の効果や自国への影響度等の貴重な 実験データを収集する目的も大きいのです。 これが外交の一端です。 日本も、安全な机上で論議するだけで非常事態に現実的な対応ができない 「専門家」では無く原子炉の事故や核物質拡散テロ、核戦争の恫喝に 対処できる専門集団を構築するべき時期に来ていると思います。 勿論、現在の政治家や頭の中でしか考えないお役人、官僚的で硬直化した 昔の軍隊ではなく、医療体制やカウンセラー等まで含む統合化システム集団が 望ましく、何よりデータを隠さないで国民を効果的に守れる集団を望みます。 自衛隊・米軍・警察の方々は生身の人間です。使い捨ての駒ではないのです。